2012/02/10

cookinglecture


お料理なるほど講座
ふくめん調理人
<第一回><第二回>


<第一回>料理盛りつけの条件(日本料理の場合)
2005-07-20
(一)料理の盛りつけは、基本的に山水画の世界。つまり遠近法と立体を基本としております。
 奥のものは高く大きく、手前のものは低く小さく・・・。
 何の世界にも相通ずるところがあると思います、
 しかしながら、器に盛りつけるとき、細長いもの、薄いものもありますので、あくまでも原則的にではあります。

(二)料理盛りつけの色について
 私は栄養士ではありませんので、色と栄養素については詳しくありません。
 あくまでも料理上、黒豆や昆布のように、黒いものはより黒く、青いものはより青く、白いものは白く、素材の持つ自然な色を用いるのがよろしいと思います。
 しかし、擂り身に色を混ぜ、見立ての食材(花鳥風月等)を造ったり、百合根をピンクに染めて桜の花びらに見立てたり、烏賊(いか)を卵黄焼きにして、銀杏(いちょう)の葉に見立てたりと、原材料の色ではなく、見立てるものの色を付ける場合もありますので、自然色が絶対というわけではありません。

(三)料理盛りつけの数(個数)について
 丼物に添えられる小皿に盛られた二切れの沢庵は、見慣れたところでしょう。
 今日では、いろいろの香の物(漬け物)が使われるようですが、この「二切れ」、いわれがありまして、一切れだと、「人切り」と武士が忌み嫌い、三切れだと、「身を切る」と忌み嫌われ、落ち着いたところが「二切れ」であったという説があります。お茶請けの羊羹(ようかん)二切れというのも、その名残なのでしょうか。

 昔から和食の世界では、七・五・三の「数」を大切にしてきました。
 特に複数の食材を盛るとき。たとえば刺身の盛り合わせなどは、代表的には、赤身(マグロ)を三切れ。
 これは、前記の沢庵の話と異なります。
 それでも、七・五・三を大事にしている和食では、赤身が三切れ、白身を二切れ、これで「五」とします。
 それに、帆立貝でも二切れ加えましょうかな。これで「七」です。
 このように、数種類の食材を盛り合わせる場合は、さほど考えなくても宜しいようです。
 ともあれ、私も料理人として盛りつけを行うとき、七・五・三というのが、落ち着きも良く。安定感もあり、見た目にも違和感がないことは確かです。

*次回は、料理盛りつけ時の「味について」、「掻敷(かいしき)について」、できれば「季節について」連載を続けます。


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<第二回>料理盛りつけの条件(日本料理の場合)
2005-08-20
(四)料理の盛りつけ時の味について
 盛りつけに味は関係がないように思われるでしょうが、ここで云う味とは、おいしそうに見せる盛りつけの色や形のことではありません。
 もちろん、見た目の味(おいしそうに見せる)も大切なことですが、そのことはちょっと横に置いておいて・・・。
 上記の見た目の「青(緑)」ではなくて、「青」についてです。
 つまり、口直しや脇役の意味を持つ「味」のことで、必ず青(緑)色ということでもありません。
 たとえば、豚の角煮に絹サヤが盛ってあったり、刺身の盛り合わせの横に、ミョウガの薄切りや貝割れ菜があります。また、盛り合わせ天ぷらの中のシシトウやオクラ、大葉やショウガなどもこれに当たります。
 主な素材として用いるか、口直しなのか、脇役なのかにおいても調理法は異なりますが、調理人は、日々、真心を持っていろいろ工夫し、仕事に向かいます。

(五)料理盛りつけ時の掻敷について。
 お料理の下に引くものを「掻敷」と言いますが、これには、「掻敷」「皆敷」「改敷」と三種の書き方があります。
 この由来について調べたことがありますが、ついに、そのルーツは分かりませんでした。
 料理人という職種が生まれてからの文化で、専門用語なのかもしれません。
 今日の料理人が、この「掻敷」をどのように考え、どのように用いているかを記してみようと思います。

 日本には、季節ばかりではなく文化にも四季があります。俳句には季語、生け花、もちろん料理にも・・・。
 掻敷は、季節や時節、祝い事を表す大きな要素のひとつでもあるのです。
 春なら笹の葉の新芽若葉。夏になれば青もみじや柏の葉。秋は菊の葉に紅葉もみじ。冬は寒椿、山茶花の葉。祝い事なら南天の葉という具合で限りはありません。
 二月ならば、梅の「小枝を一輪」。これも立派な掻敷なのです。葉物ばかりが「掻敷」というわけではありません。
 天ぷらの敷き紙も同じで、時節に合わせ、「かぶと」に折ったり、「鶴」や「白鳥」に折って用いることもあります。お客様の中で、一人でも二人でも、このことに何かを感じて下されば、料理人の喜びこの上なしです。

*注1 掻敷を用いて、料理を盛ったとき、その料理の下方に、掻敷の「すそ」が見えてはな りません。「下(舌)を出す」といって、とても失礼なこととされています。
*注2 器に「食せないものを盛ってはいけない」とする料理の考え方もありますが、私は、そうとばかりは言えないと考えていますし、どちらが正しいとも思いません。読者諸氏 はいかがでしょうか。


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